なぜシマウマは家畜化されなかったのか

「なぜシマウマは家畜化されなかったのか」。この章立てが目に止まり、「銃・病原菌・鉄」という本を図書館で借りてきた。

 

 

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 「銃・病原菌・鉄」という本は、何について書かれているか。前書きを読むと、この本は「世界の様々な民族が、それぞれ異なる歴史の経路を辿ったのはなぜか」をテーマにして、戦いや食糧生産、銃・病原菌・鉄という3つのくくりで考察している。そして、私が興味を引いた「なぜシマウマは家畜化されなかったのか」は、食糧生産のくくりで説明されていた。

 

私は、牛・豚・鶏などの家畜されている動物が、どんな気持ちで屠殺されるまでに過ごしているかの思いにふけることがあり、また、屠殺される直前は痛くないのだろうかと関心を持ったりする。幸い、いろいろと調べたところ、屠殺時に痛みや苦しみを動物に感じさせないように処理をしているのが分かり安堵することがある。このように、家畜について思いふける私にとって、「なぜシマウマは家畜化されなかったのか」はとても関心を引いた。

 

この章を読んでみる。家畜化とは何かから始まり、家畜化された動物、家畜化が進んだ地域などを分析している。興味深かったのは、「家畜と飼育は違う」という説明だ。飼育は、自然で育った動物を捕まえてきて育てることであり、家畜は繁殖から飼育までを人間が築いたシステムで行うことだという。あまり深く考えたことがなかったので参考になった。

 

では家畜化された動物、家畜化されない動物の違いはなにか、文豪トルストイの小説『アンナ・カレリーナ』の書き出し「幸福な家庭はどれも似たものだが、不幸な家庭はいずれもそれぞれに不幸なものである」になぞらえて、家畜化できた理由よりも、家畜化できない動物の理由を次の通り6つ説明している。

 

1つ目は餌の問題。餌にコストが掛かりすぎる。例えばライオン。または、偏食すぎる動物、例えばコアラ。

2つ目は成長速度の問題。成長に時間がかかりすぎる。例えばゾウやゴリラ。

3つ目は繁殖の問題。繁殖に至る過程が複雑である。例えばチーターは、何頭かのオスがメスを数日かけて追いかけ回すことでメスが排卵して繁殖が可能になる。

4つ目は気性の問題。人を殺すほどに気性の激しい動物。例えば、グリズリーや水牛

5つ目は性格の問題。囲いの中に入れられてパニックになるような動物は家畜に向かないそうで、例えばガゼル。

6つ目は序列形成の問題。群れたときに序列を作る性質があると、人間を序列のトップに感じさせることができ、制御をしやすくできるが、この性質がないと育てにくい。そもそも個体でなわばりを作るタイプ、群れはするが序列を作らないタイプ。例えばレイヨウは、群れを作るが一定期間で縄張りを作り、他のレイヨウを受け入れないそうだ。

 

ちなみにタイトルにあるシマウマは6つの理由のどれに当たるかというと、気性の問題らしい。シマウマは年を取るにつれてどうしようもなく気性が荒くなる。また、人に噛み付くと絶対に離さないという習性があり、家畜化は難しいそうだ。

 

シマウマはたくさん野生にいるけど、なんで家畜化されないのか。きっと美味しくないからかなと思ったが、なるほど、味の問題以前に動物が持つ性質に問題があったのだなとわかり、私の関心が満たされて満足した。

 

ちなみに、こういう本は、理論展開の仕方などで参考になる。発売時期は2012年と古いが、思考の緻密さを養うには良いと思った。

 

 

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